認知件数が最も多い大阪府は、検挙率では47位 ― 都道府県の治安データを2つ並べて読む

📰 ・ 2026-08-05

「治安が悪い」と言うとき、何を見ているのか

都道府県の治安を比べるとき、いちばんよく使われるのが刑法犯の認知件数である。ただ、認知件数は「起きた数」であって「解決した数」ではない。検挙率と並べると、同じ県の見え方が変わる。

認知件数は全国で2002年をピークに3分の1へ

人口千人当たりの刑法犯認知件数は、1975年に11.0件だった。2002年に22.4件でピークを打ち、その後は一貫して下がって2021年に4.5件と最小になる。直近の2023年は5.7件で、ピークの4分の1、2021年からはわずかに戻している。

50年の推移で見ると、この指標は「増えて減った」1つの山を描いている。いまの水準は1975年より低い。

都道府県別では、上と下で3.7倍の差

2023年の都道府県別では、多い順に大阪府9.2件、群馬県7.0件、茨城県7.0件、兵庫県6.9件、埼玉県6.8件。少ない側は岩手県2.5件、秋田県2.6件、大分県2.7件、山形県2.9件。

上と下では3.7倍の開きがある。ただし認知件数は、被害届が出されて初めて数に入る。届け出のしやすさや警察の体制も数字に効くので、そのまま「治安の良し悪し」とは読めない。

検挙率で並べ替えると、順位がほぼ裏返る

刑法犯の検挙率は、全国で1985年の64.2%を最大に、2001年に19.8%まで落ち、2023年は38.3%まで戻している。

都道府県別では、高い順に島根県72.7%、秋田県67.9%、鳥取県67.6%、山形県65.0%。低い側は大阪府26.7%、栃木県29.0%、茨城県30.1%、千葉県31.5%。

認知件数が最も多い大阪府は、検挙率では47位。逆に認知件数の少ない秋田県・山形県・島根県は、検挙率の上位に並ぶ。

この2つが逆相関するのは偶然ではない。件数が多い都市部ほど1件あたりに割ける手が薄くなり、件数の少ない県では1件を追い切れる。「認知件数が少ない県は検挙率も高い」という組み合わせが、都道府県のデータでははっきり出る。

交通事故死者数は、都市部のほうが少ない

同じ「安全」でも、交通事故になると順位の向きが変わる。人口10万人当たりの交通事故死者数は、全国で1975年の9.6人から下がり続け、2021年に2.1人で最小、2024年は2.2人。

都道府県別では、多い順に徳島県4.8人、愛媛県4.1人、山口県4.0人、和歌山県3.9人。少ない側は東京都1.0人、神奈川県1.2人、島根県1.4人、大阪府1.5人。

刑法犯では最下位だった大阪府と東京都が、交通事故死ではもっとも少ない側に来る。人口密度が高い地域では走行速度が低く、公共交通の分担率も高い。事故そのものの件数ではなく、死に至る事故の割合が下がる。

警察官の配置は人口と比例しない

人口千人当たりの警察官数は、全国で1975年の1.7人から2024年の2.1人まで緩やかに増えている。

都道府県別では、多い順に東京都3.1人、京都府2.6人、和歌山県2.5人、高知県2.5人。少ない側は埼玉県1.6人、滋賀県1.7人、宮城県1.7人、神奈川県1.7人。

首都圏の埼玉県・神奈川県が下位に来るのは、昼間人口が周辺県から流入する構造と関係がある。警察官の配置は夜間人口を分母にするので、通勤先で起きる事案は分母に反映されない。

4つ並べて読むときの注意

| 指標 | 最も多い(高い)県 | 最も少ない(低い)県 |

|---|---|---|

| 刑法犯認知件数(千人当たり) | 大阪府 9.2件 | 岩手県 2.5件 |

| 刑法犯検挙率 | 島根県 72.7% | 大阪府 26.7% |

| 交通事故死者数(10万人当たり) | 徳島県 4.8人 | 東京都 1.0人 |

| 警察官数(千人当たり) | 東京都 3.1人 | 埼玉県 1.6人 |

同じ県が、指標によって上位にも下位にも来る。大阪府は認知件数1位で検挙率47位、東京都は警察官数1位で交通事故死47位。

治安を1つの順位で語ろうとすると、この入れ替わりが消えてしまう。都道府県のデータは、指標を2つ以上並べて初めて読める。

出典

  • 総務省「社会・人口統計体系」(政府統計の総合窓口 e-Stat 公開データ)

刑法犯認知件数・検挙率は2023年、交通事故死者数・警察官数は2024年の値。推移は1975年以降。

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